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Note 14 アマチュアアニメ制作に関するコーナー。 ( knowhow ) [ RESPONCE: 2 of 7 ] Title: デジタル時代の撮影技術 Subject: 撮影電算化メリットとデメリット Bytes: 4349 Date: 1998/06/29 07:01:15 Author: INETGATE(Kei ) Author's name: Kei (send Mail) (goto HomePage) ---- WASH Ver.-0.0.0 ----  早大アニメ研では、ビデオカメラでの映像をキャプチャカードを通してハードディスク にコマ撮りするという撮影方法を基本にしています。  現在研連の電算機導入サークルには、(1)この方式を用いるサークルと、(2)彩色済画像 のスキャナ入力を基本にするサークル、そして(3)コンピュータ上での画像生成を基本にす るサークルの3通りの系統があるようです。  それぞれの利点と欠点を挙げてみますと・・・ (1)画質はきわめて自然。撮影機材の光学的構成は8ミリ時代と全く同じなので、8ミリから の転換が容易で、製作プロセスを大きく変更しなくてよいという利点があります。  撮影もコマ撮りは瞬時にできるため非常にスピーディ。(間違えたらコマ数を記録してお いて、あとで削るという裏技もある・・・でも実は大抵はリテイクの方が早い)  難点は、カメラワークが撮影台上の物理的移動に頼ることです。そのためコンピュータ によるパンや合成多段マルチのような夢の世界とは無縁です。  またビデオ画像がかなりファジィなものであるため合成用の切り抜きがかなり難しく、 実写映像・スキャナ画像等との親和性が良くないという問題があります。実際のところ、 コンピュータらしい芸はスーパー等の光学合成に限られてしまいます。   (2)画質は自然。物理画材で着色した素材であるにもかかわらず、デジタル合成を自由に使 えるため、人物の背景が突然燃えさかる炎に変化する(千葉大・私の神サマ)ような離れ 業が可能になります。  難点は・・・?うちではやったことがないので勝手に想像するに、スキャンに時間が必 要なこと、またモニタ上でセルの切り抜きを1枚ずつ指示しなければならないことが挙げら れるのではないでしょうか。 (3)画質は・・・残念ながら一目瞭然。  量産プロセスが確立すれば、制作費はとても安価で着色プロセスも高速になります。当 会も昨冬のOPで実験的に採用し、着色時間は1枚平均3分強という記録を残しています。  画像生成と同時に透明領域情報も生成できるため、合成の精度は最高で、カメラワーク も自由自在です。  難点は、線の質感をうまく再現できていないこと、また色指定がうまくいかないことが 挙げられます。特にアマチュアでは、線のジャギーを上手に除去した作品があまり出てい ないようです。でも、これはいずれ然るべきソフトウェアの発売により解決されるでしょ う。  うちでもOBの次期作品には電算彩色を全面採用することが決まりましたが、線質の問題 は解決していても、色については未知の領域です。秘策はあることにはあるものの、果た して・・もののけ姫への道は遠いです・・・。  で、コンピュータ導入後の作品の変化について少々。  コンピュータ導入により進化した点を述べるのは難しいです。主要な映像表現はすでに8 ミリで実現されてしまっており、いろんな表現が簡単になったとはいえ、出来上がりにつ いての目新しさはそんなにないのです。  進化らしいことといえばカメラワーク・光学合成の自由度が上がったことがあります。 (1)式ではコンピュータの利点をあえて殺すような使い方をしているため、スーパーや透過 光などの光学合成が容易になった程度しか挙げられませんが、(2)(3)方式では、商用では オプチカル合成に頼っていたような表現を容易に使えるようになりました。  陥穽としては、デジタルエフェクトの乱用による作品品位の低下が深刻です。  実際のところ、レンズフレア等のほとんどのエフェクトは、使えば使うほど作品を安物 にしてしまうようです。また過剰な装飾のワイプ効果などもそうです。  また電子処理によるセルの拡大縮小も禁じ手に入れた方がいいようです。背景はズーム しても目立ちませんが、セルを、特に縮小させると、コンピュータ臭さがぷんぷん漂うよ うになってしまいます。  もうひとつの陥穽として、タイミング感覚の喪失があるようです。静止画を配置する場 合など、マウスで引っ張ればいくらでも時間が伸びるためでしょうか。  さらに心構えの問題にまで言及するなら、映像製作の敷居が低くなったことが必ずしも 嬉しいこととは限らない、というのを今回の研連上映会で感じました。  単に、始めるならそれなりに気合いを入れろ〜!というだけの問題なのですが、昔なら 撮影−現像という「儀式」を行う必要があったため、あまりにくだらないネタの場合、あ る程度は思いとどまる効果があったのではないでしょうか。(あるいは現像1週間待ちの時 代に生まれた私の思い過ごしかもしれませんが。)  コンピュータ処理には誘惑がいっぱいあり、安易に使ってしまうと作品の基本ビジョン を見失ってしまうことになります。これまでは「できないエフェクト」に対して壁を打ち 破る努力がなされてきましたが、これからは、ややもすると溶けだしてしまいそうになる 作品のカタチをいかにして固定させるか、が制作者の重要命題になるのではないかと思い ます。 Kei(AAA00135)